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全身病と麻酔との関係

記事ID:0000228 更新日:2021年1月4日更新 印刷ページ表示

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糖尿と麻酔 高血圧と麻酔 麻酔と喫煙(たばこ)

全身病と麻酔との関係〜いくつかの例についてご説明します〜

近年、生活習慣の変化などにともない、とくに
糖尿病をお持ちの方
高血圧をお持ちの方が増えておられます.
これらにあげた以外の病気をお持ちの方についても、もちろん、麻酔を受けるにあたってさまざまな注意点が必要です。
安全に麻酔を受けていただくために、いくつかの点についてご一緒に考えてみたいと思います。また、従来より話題となっている
麻酔と喫煙(たばこ)の関係についても私たちの考えを簡単に述べてみたいと思います。

糖尿病と麻酔

糖尿病がある場合に、手術に際して気を付ける点はいくつかあります。

そのうち、糖尿病では「全身の動脈硬化が進んでいる」ことに注意しなければなりません。動脈硬化がみられると、身体のなかの臓器やあちこちの血液のめぐりが悪くなること(血行障害)が想像できます。

血行障害によって困る身体の場所は、実にさまざまです。たとえば脳においては、脳血管に動脈硬化が起こり血液が行き届かなくなるとその場所の細胞が死滅してしまいます。この結果起こるのが「脳梗塞(のうこうそく)」です。また、心臓においては心臓に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こることにより、心臓の働きが落ちる(=「心不全」)、あるいは血液が行き届かなくなった先の心筋が死んでしまうことによる「心筋梗塞(しんきんこうそく)」が起こる可能性があります。ほかにも、腎臓の血管に血行障害が起こることによる、手術後の腎機能障害なども考えられます。糖尿病はもともと腎臓のほかにも神経や眼などにも傷害を起こすほか、免疫が低下し感染に対する抵抗力も落ちることが知られていますが、特に感染の危険は手術や麻酔に際して身体へ挿入することが必要なカテーテルや手術の創(きず)そのものの感染のリスクも増加させます。

高血圧と麻酔

ふだん病院にかからない方が珍しく病院においでになったり、手術を受けることが決まって緊張したり…このようなことだけでも、血圧がいつもより上がってしまうことはよくあることです。

血圧の値は、正常範囲であるのが望ましいことはここで今さらあげるまでもありません。しかし、高血圧のある方が必ずしも、手術を受けるべき時期に、適正な血圧値にコントロールできているとは限りません。少しばかり血圧が高いからといって麻酔をお断りすることはありませんが、異常に高い場合は手術の内容によっては降圧治療を十分行ってから麻酔を受けることをお勧めしております。

血圧が高いにもかかわらず、手術を受けることが予定された方には、手術中および手術後に予想される危険について、説明を受け、納得していただく必要があります。

たとえば、ふだんの血圧が140mmHgくらいの方がおられたとします。
この方が、手術中に麻酔や手術中の出血などの影響で血圧が100mmHgに下がったとするとその差は40mmHgです。これに対して、普段の血圧が190mmHgくらいの方は、おなじ手術中の状況で血圧が100mmHgに下がれば、その差は90mmHgと実に大きな下げ幅となります。

どの麻酔法も一般に血管拡張作用を持つため、血圧が下がる機会が多くなります。つまり高血圧の方は血圧が高ければ高いほど、血圧の下げ幅が大きく、血圧の変動が激しいことは、身体の中の臓器などすみずみへ血液が行き渡らなくなる危険が増えることになります。血液が行き渡らなくなる結果、予想される合併症は糖尿病のところでも述べた「脳梗塞」「心筋梗塞」ほかの臓器傷害です。

手術が終わり麻酔が切れると、今度は逆に麻酔による血圧低下作用がなくなるため、血圧が上がる危険が増えることになります。動脈硬化が少なく血管に弾力性が保たれている方では、このときの血圧の上がりかたは緩やかであることが多い一方、高血圧の方のように動脈硬化が予想される場合では、血圧の急激な上昇にさらされる危険があります。異常高血圧で起こる可能性のある合併症としては、頭では「頭蓋内出血(脳出血、くも膜下出血など)」、心臓では血圧の上昇に耐えられなくなった場合に起こる「心不全」など…実に様々です。

麻酔と喫煙(たばこ)

たばこを吸っている方が手術を受けるにあたって、不利益をうける可能性がある点は、いくつか言われていますが、代表的なものだけでもあげてみますと、

  • 呼吸器系の合併症の発生の危険
  • 循環器系の合併症の発生の危険
  • 創(きず)の感染の危険
  • 創(きず)の治りが悪くなる危険

などがあります。これらのイベントが起これば、追加の手術やほかの様々な治療が必要となる、ということもありえることです。その場合は当然、入院期間が延び、支払う医療費が増え、何よりもご自身の身体的苦痛が増えることになりかねません。

当院でも、手術の種類によっては、禁煙をお約束いただけない場合には手術をお引き受けできない場合がございます。また禁煙をしていただいていたはずが達成できていなかった場合に、手術の日取りがキャンセルになる場合もあります。この点についてはそれぞれの診療科の主治医にご確認の上、ご注意願います。

麻酔科の立場から、手術に際して禁煙をお願いするときに考えることは、主に2つの点です。

1点目は、手術の前に禁煙をすると、発生の危険が減る合併症があることです。適切な禁煙を行うことによって、上に挙げた危険(呼吸器系、循環器系、手術創関連合併症)の発生が減ることが分かってきました。

2点目は、喫煙を続けている方が、手術後早期に、苦しそうになさっている姿を目の当たりにすることです。手術という体験は非日常的なもののひとつであり、手術という身体に対するストレス(侵襲)に加え、全身麻酔では、麻酔中の人工呼吸(換気)により(程度の差はありますが)避けられない気管上皮への傷害、麻酔ガスによる痰の増加などが起こります。手術の後は創(きず)の痛みを和らげる処置を講じますが、たばこによって痛められた気道と手術の後に増える痰は、痛みを引き起こす多くの原因となります。特に手術後早期の管理に携わっていると、たばこを吸わずにいればこのようなことには…と感じずにはいられません。

禁煙を守った期間と、それに応じた効果の関係については、もちろん禁煙をすればするほど有利といえます。肺には呼吸によって身体に入ってきた外敵から守る機構が備わっていますが、たばこによってこの仕組みが傷害されると、禁煙して元に戻るまでには半年かかるといわれています。手術を受けると決まれば、4週間は禁煙しましょう。たばこのけむりという化学物質には、気道は過敏になっていますが、この過敏性をとる(安定化させる)には少なくとも1週間程度必要です。逆にいえば1週間以内の喫煙は大きな危険を背負いながら手術に臨むことになるのです。そして1週間やめられたら…2週間、3週間は、すぐ目前です。ほら、もう4週間の扉があなたを待っていますよ。

手術という大きなイベントは、また、人生の中で禁煙を実行できるきっかけとなる方も多いようです。

このページを最後まで読んで下さったあなた、ぜひ考えてみてください。


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