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膵臓がんの外科手術について

記事ID:0000329 更新日:2021年1月4日更新 印刷ページ表示

1. 膵臓がんとは

膵臓がんはいろいろながんのうち最も予後不良のがんとされています。厚生労働省による人口動態調査によると、2004年の日本における死亡数は22,260人で、男性が11,933人、女性が10,327人、がんの死因別では男女とも第五位で年々増加傾向にあるがんです。20年前の治療成績と現在の治療成績 を比べて、治療効果・予後改善という点ではあまり改善がなく、罹患率と死亡率がほぼ同数であり、膵臓がん全体では5年生存率(5生率)は5~10%と極めて予後不良のがんです。膵臓がんの予後不良の原因として、(1)腹痛・黄疸といった症状が出てきた時には既にかなりがんが進んでいることが多い(2)肝臓・肺・リンパ節・神経・腹膜などの周囲の臓器に転移しやすい(3)進行が極めて速い場合が多い(4)外科治療(切除)以外に有効な治療が確立されていないなどの理由があげられます。現に膵臓がんの約8割は高度に進行したStageIVであり、切除率は約4割にすぎません。早期診断が確立されていない現時点では、膵臓がんは完全に切除するのが非常に難しいがんといえます。

2. 膵臓がんの種類と手術成績

膵臓がんの治療の第一選択は外科的切除ですが、その切除率は約40%です。通常型膵がん(浸潤性膵管がん)が全体の約80%を占めその5生率は約13%です。主に切除の対象となるのはStageIII・IVの進行がんであり、StageIIIの5生率は25.9%、StageIVAの5生率は11.9%となっています。通常型膵がん以外に嚢胞腺がん、膵管内乳頭腺がん、内分泌腫瘍などがありますが、これらの5生率は55~74%と比較的予後の良好な膵臓がんです。

3. 手術術式

膵臓がんの手術術式は腫瘍の局在により違います。膵頭部のがんの場合、主に膵頭十二指腸切除(PD)が選択されます。従来、膵頭十二指腸切除(胃の3分の2切除)が行われていましたが、近年は術後の栄養状態の改善の期待される幽門温存十二指腸切除(PPPD)や亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)など のより胃を多く温存する手術が多く施行されるようになってきました。脾臓よりに膵臓がんができた場合、膵体尾部切除(多くは脾臓合併切除)が施行されます。より広範に膵臓にがんが広がった場合、膵全摘が選択される場合もありますが頻度的にはかなり稀になっています。いずれの場合も予後不良な膵臓がんの治 療成績向上のため、周辺のリンパ節郭清や神経切除が付加され、門脈の合併切除が行われています。より広範な切除の目的で大動脈周囲のリンパ節郭清も行われていましたが、大規模な臨床試験の結果、予後の向上につながらないことがわかり、これは控えられるようになりました。また、大動脈周囲のリンパ節転移や 肝転移、腹膜転移のある場合には手術の適応にはなりません。

4. 術後補助化学療法

切除率は約40%にすぎない膵臓がんですが、根治切除が可能であっても肝再発や局所再発・リンパ節再発などによりやはり予後不良です。術後の治療成績を上げ るためにこれまで術後に抗がん剤投与が行われていましたが、なかなか有効な成績をあげることができませんでした。現在膵臓がんに保険適応のある抗がん剤は ジェムザール、TS-1,5-FUです。ジェムザールは単剤で膵臓がんに対して10~20%の奏功率(腫瘍がある程度小さくなる確率)があり、近年、膵臓がんの根治術後に併用することにより無再発生存率、全生存率ともに向上することが分かってきました。また、TS-1は単剤で膵臓がんに対して32.2%という高い奏功率を示し、術後に併用することによりさらに予後を向上する可能性があり、今後の結果が期待されています。また、放射線治療の併用についてはまだ明らかな結果は出ていません。分子標的治療薬という新しい薬剤との併用により予後の向上も期待されますが、これもまだ明らかな結果は出ていません。

5. さいごに

予後不良の膵臓がんですが、手術適応を見極めて完全切除することが外科的治療の原則と考えます。術後の化学療法をはじめとして放射線治療をふくめた集学的な治療を行い、日夜、予後の改善を目指しています。

当院は日本肝胆膵外科学会高度技能医師修練施設に認定され、高度技能医4名、そのうち高度技能指導医2名(高倉管理者、貞森医師)を擁しております。今後も困難な肝胆膵領域の手術治療を地道に行っていく所存でございますのでどうぞよろしくお願いいたします。


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