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手術療法について

記事ID:0000333 更新日:2021年1月4日更新 印刷ページ表示

肝臓がん・膵疾患の外科治療

肝臓がん

肝細胞がんとは

 肝臓のがんは、肝臓にできた「原発性肝がん」と別の臓器から転移した「転移性肝がん」に大別されます。原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、胆汁を十二指腸に流す管(くだ:胆管)の細胞ががんになる「胆管細胞がん」があります。
 日本では原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、肝がんというとほとんどが肝細胞がんを指しますので、ここでは「肝がん」と記して「肝細胞がん」について説明します。

肝がんと肝炎ウイルス

 肝臓がんになる人にはある特徴があります。それは、B型肝炎やC型肝炎に10年・20年と比較的長い期間かかっていた方が多いということです。
全国集計では肝臓がんの約90%近くの方が肝炎ウイルスにかかっている方です。したがって、今現在肝臓がんがない方でも、肝炎ウイルスにかかっている方は、要注意です。現在では、肝炎ウイルスを駆除する治療もありますので、専門医の診断を受けることをお勧めします。
 肝炎ウイルスにかかってない人では、お酒の飲み過ぎの方(=アルコール性肝障害の方)、生活習慣病(糖尿病や脂肪肝など)の人が残りの大半です。つまり、まったく正常の肝臓から「肝臓がん」ができることは稀であり、肝炎やお酒、生活習慣病など何らかの背景因子のある人は注意しなければなりません。

肝臓がんの症状

 肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、がんによる症状がでない方が大部分です。医療機関での定期的な検診や精密検査、ほかの病気の検査のときに肝がんが発見されることが多くあります。肝臓は通常 1~1.5Kg位の臓器であり、その中に5cm大の肝臓がんができても、肝機能が障害されるということはほとんどありません。症状を手掛かりに肝臓がんを見つけるのではなく、前述のように肝臓がんになりやすい人を中心に肝臓がんを見つけていくことが重要なのです。

肝臓がんの検査方法

 肝細胞がんが疑われるときにはCT検査、MRI検査、超音波検査、必要に応じて血管造影検査を施行します。「がん」なのかどうかだけを診断するのではなく、肝臓の機能や予備力、さらに、1個なのか、複数個あるのか検査します。「採血」では、肝機能・肝予備力、肝炎ウイルスの状態などを見ています。「画像診断」では腹部超音波、CT検査、MRI検査を行い診断します。胃がんでは胃内視鏡、大腸がんでは大腸内視鏡といったような、病変を直接見る検査がありますが、肝臓がんではそのような直接的な検査はありませんので、「採血」、「画像診断」で得られる結果から診断します。
 当院では撮影したCT情報から肝臓の3D解析を行い、肝切除のナビゲーションに応用できるようになりました(下図)。この解析結果と肝機能の評価から、最も合理的な肝切除術式を検討することで、安全性と根治性の追求が可能となります。

肝がん3D画像1肝がん3D画像2

肝臓がんの治療

 肝細胞がんの治療は、1)手術療法、2)局所療法(ラジオ波焼灼療法、エタノール注入療法)、3)血管塞栓療法、および4)肝移植があります。最近では、分子標的治療薬が肝細胞癌の治療として認められ、進行した症例に対し導入されます。
 肝細胞癌の治療方針の決定には、全身状態も考慮されたうえで、基本的に“肝癌診療ガイドライン“のアルゴリズムを参考にします。このアルゴリズムはあくまでも「マニュアル本」みたいなものです。すべての患者さんに適応できるわけではないですし、例外も多数あります。肝機能が非常に悪い人であっても様々な準備を行い、手術を可能にしたり、腫瘍がきわめて大きかったり、また非常に多数であっても、カテーテル治療や抗がん剤治療との組み合わせることで治療を可能にしたりと、様々な工夫をすることにより治療を行うことが可能となっています。

肝臓がんの治療成績

術後生存率の折れ線グラフ

上のグラフは、術後生存率を表しています。当院における肝細胞がんに対する肝切除後の5年生存率は65%で全国集計の54%を大きく上回っています。
これは、当院の肝がん診療における切除を中心とした集学的治療の結果であると考えています。

おわりに

 肝臓がんの治療は、肝切除(外科手術)、局所療法(ラジオ波焼灼術)、肝動脈塞栓術(カテーテル治療)、化学療法(抗癌剤治療)など、肝障害度と腫瘍条件により選択する必要があります。私たちは、外科、内科、放射線科の総合カンファレンスを行い、患者さんそれぞれに適した治療法を検討しています。様々な診療科がその特性を活かしてて肝臓がんの治療にあたっています。各診療科はその窓口となって皆さまのより良い診断・治療を考えていきたいと思います。
 当院では年間100例近くの肝切除を行っており、中四国地方でも有数の手術経験をもつ施設であると自負しております。他の病院で手術できない難しい症例や、小さな創でカメラを用いて行う鏡視下肝切除も積極的に行っておりますので是非ご相談ください。

(文責:外科科長 門田一晃)

転移性肝がんとは

 転移性肝がんとは、肝臓以外の臓器にできたがん(原発巣)が肝臓に転移したものを意味します。肝臓は肺に次ぐ転移の好発臓器であり、ほぼすべてのがんにおいて、肝臓へ転移する可能性があります。実際には消化器系がん(大腸がん、胃がん、膵がんなど)において肝臓は、転移先として最初に標的となる臓器と考えられます。

大腸がん肝転移について

 転移性肝がんのなかで最も頻度が多く、手術を行うことも多い大腸がん肝転移について説明します。大腸・直腸がんの肝転移術後の5年生存率は25%から40%と報告されていますが、Stage Ivという進行度からすると良好な成績であるといえます。腹部の消化器の血液は一度肝臓を通ってから全身に回るため、肝転移は肝臓というフィルターでがん細胞がひっかかり発育した状態と考えることができ、他の臓器への転移の一歩手前の段階で見つかったと考えられるためです。従って大腸・直腸がんからの肝転移に対しては肝切除が最も良い治療と考えています。ただし肝転移症例すべてが肝切除の適応となるわけではありません。肝門部リンパ節に転移がある場合は肝切除術を行っても長期生存が望めません。
 このような症例を除いて、手術はあくまで安全にしかも確実にすべての腫瘍が切除可能と判断される場合に行われます。正常肝の場合、非腫瘍部分の肝容量が30%以上残存し、かつ腫瘍をすべて除去できるかで切除可能かの可否を決定し、肝切除後に残った肝臓に再発した場合は再度肝切除を追加することが最良と考えられます。
 当科での異時性大腸癌肝転移根治切除例の5年生存率は49%と良好な結果が出ています。

転移性がんの述語生存率の折れ線グラフ

肝転移に対する治療

1) 手術

 最も治療成績が良いとされている方法は肝切除、すなわち外科的に切り取る方法です。しかし、がんの広がりが目立つために切除できない患者さんの方が多いのが現状です。ただし、切除か否かの判断には外科チームの手術熟達度も大いに関与しますので、肝切除に実績のある施設を選ぶことが大切です。
 また、薬物治療の進歩により、他病院で切除不能と診断された患者さんも肝切除と薬物治療の組み合わせにより長期生存を得られるチャンスが増えてきました。たとえば、次の写真に示したように右の肝臓全域にある肝転移に対し、薬物療法を行った後、肝右葉切除術を行い、腫瘍をすべて取りきれることもあります。

化学療法前のCT画像(黒く抜けている箇所が肝転移で、静脈に浸潤しています)
化学療法前のCT画像1

化学療法後のCT(黒く抜けている箇所は小さくなっています)
化学療法後のCT画像2

2) 薬物療法

 大腸がんの抗がん剤治療では様々な抗がん剤が用いられています。従来ならば肝転移を含めたすべての大腸がんが切除できない患者さんの生存期間は、1年未満とされていましたが、多剤併用療法(Folfox療法やFolfiri療法など)や、分子標的薬(アバスチン、アービタックス、ベクテイビックス)を併せて治療を行うことにより、2年近くまで生存期間が延長されてきました。近年、これらの治療効果の高い薬剤の普及によって、切除不可能だった肝転移が切除可能となる、「Conversion therapy(コンバージョンセラピー)」という治療戦略が実現し始めています。そこで当科では大腸肛門外科、腫瘍内科とも協力し、それぞれの患者さんにあった適切な治療を行っています。

おわりに

 抗がん剤治療の進歩により、今までは手術不能と考えられていた患者さんが手術を受けられるようになり、治癒する方もいらっしゃいます。簡単にあきらめずに専門病院を受診されることをお奨めします。

(文責:外科科長 門田一晃)

膵疾患

 外科治療の対象となる膵疾患は膵の悪性腫瘍、良性腫瘍および一部の慢性膵炎です。かつて急性膵炎も外科手術の対象とされていましたが、現在ではほとんど行われなくなりました。
 膵臓の悪性腫瘍の中で最も多く、最も治療成績が不良なものは浸潤性膵管がん(通常型膵がんともいいます)です。浸潤性膵管癌の切除率は約30%~40%、切除例の5年生存率は一般に15%程度に過ぎません。その大きな理由は進行した状態で発見されることが多いことであり、その原因としては特有の症状がないことや膵臓の精査が技術的に難しいことが挙げられます。
 進行度I、Iiの比較的早期のがんでは50~60%の生存率であり、治療成績を改善するにはいかに早期のがんを見つけるかということにかかっていると言っても過言ではありません。当院では卓越した技術を持つ胆膵内科医をスタッフとして擁しており、今後いっそう早期診断に取り組み、治療成績の改善を図りたいと思っています。

当院の浸潤性膵管癌切除症例予後

当院の浸潤性膵管癌切除症例予後生存率の折れ線グラフ
​5年生存率 33.6% 生存期間中央値 28.0か月

 浸潤性膵管がんの外科治療は膵頭部がんであれば膵頭十二指腸切除術が、膵体尾部がんであれば膵体尾部切除が行われ、進行がんに対しては門脈合併なども行っています。当科では年間30~40例の膵疾患(うち膵頭十二指腸切除は約20例)を手術していますが、術後合併症も少なく(術後臨床的に問題となる膵瘻は約6%)、安全に注意した手術を行っています。
 なお、当院で行っている膵頭十二指腸切除術は術後の食物の通過障害を防止するために胃の出口を約2cm切除する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術です。
 最近の新しい取り組みとして、膵臓周囲の神経叢や血管にがん浸潤が疑われる(Borderline resectable膵がん)患者さんに対して切除前に放射線・化学療法を行っています。神経叢浸潤を伴う患者さんの手術後の成績が不良であることから、近年開発された新規抗がん剤の投与と放射線照射を手術前に行い、なんとか手術成績の改善につなげたいという試みで有効例もでています。

Borderline resectable膵癌 術前放射線化学療法後切除症例 予後の画像
Borderline resectable膵癌 術前放射線化学療法後切除症例 予後

これまで(2014年5月現在)、このような治療は 11人の患者さんに施行し、施行した11人中8人が御存命で、一つの治療の選択肢として期待しています。
切除可能として切除した患者さんの生存曲線と術前化学療法後切除の患者さんの生存曲線

(左図
青:はじめから切除可能として切除した患者さんの生存曲線
緑:Borderline resectable膵癌として術前放射線化学療法後切除した患者さんの生存曲線)

また膵臓外科の領域でも、当院の特徴の一つである低侵襲治療としての腹腔鏡下手術を積極的に導入し、良好な手術成績と術後のQOL(quality of life:生活の質)を追求しており、膵体尾部の良性あるいは境界悪性疾患に対して腹腔鏡下膵体尾部切除を行っています。
 腹腔鏡下膵切除は2013年から保険収載されました。2013年の当院での手術件数は7例ですが、最近ではその比率が飛躍的に増加しています。

臍の創部から膵体尾部を摘出すい疾患手術の画像1すい疾患手術の画像2

おわりに

 膵疾患の診断・治療は、非常に専門性の高い領域です。当院は内科、外科、放射線科それぞれにエキスパートを要していますが、それぞれが密接に連携し、患者さんの来院時から連携を開始し、週1回のカンファレンスで更に綿密な治療方針の決定を行っています。外科においても専門医が多い施設ですので、膵難治疾患に対して、総力をもって、知識と経験、最新の知識と技を駆使し、時には低侵襲に、時には集学的に、積極的かつ安全・確実に治療を行っております。
 膵領域の疾患でお悩みの患者さんやご家族には、納得の行く治療が安心して受けて頂けるよう全力で協力させて頂きます。
 平日は毎日高度技能医が外来診療に当たっておりますので、是非ご相談ください。

(文責:外科科長 日置勝義)


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患者さん及びご家族の皆さまへのお願い
※当院は原則予約制です。初診はかかりつけ医で予約を取り、紹介状をお持ちください。
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