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乳がん

記事ID:0001094 更新日:2021年3月1日更新 印刷ページ表示

はじめに

欧⽶に追随するかのように、⽇本でも⼥性のがんの罹患率1位は乳がんになって何年にもなります。最新の統計によると、⽇本⼈⼥性の約20⼈に1⼈は乳がんを患うと⾔われています。恐ろしい時代になったものです。乳がんは患者数がとても多い疾患であることも特徴ですが、その治療法が極めて多岐にわたり複雑であるのも特徴です。特に、がんの性質に合わせた個別化薬物療法の進歩は近年⽬覚ましく、治せる可能性がとても⾼くなったがんと⾔えます。また、不幸にして全⾝に再発した場合でも薬物療法によって⻑期的にがんの進⾏を⾷い⽌めることが可能です。本稿では、なかなか分かりづらい乳がん診療を、できるだけ分かりやすく解説します。

 

乳がんの診断

乳がんの診断には、医療者の側に、かなりの専⾨的知識と技術が必要です。まず、乳腺に何かしらの異常を感じたら、あるいは乳がん検診(マンモグラフィ、触診など)で異常を指摘されたら、最も⼤切なことは乳腺疾患の診療を専⾨、あるいは得意とする医師のもとを受診することです。マンモグラフィを設置して乳腺疾患の診療を専⾨として開業されているクリニックもありますし、総合病院であれば“乳腺外科”とか、“乳腺・内分泌外科”とか、当院のように“乳腺甲状腺外科”と称して診療する科があります。⽇本乳癌学会のホームページには全国の乳腺専⾨医や認定医が公開されていますし、マンモグラフィ精度管理中央委員会のホームページには、全国のマンモグラフィ読影認定医が公開されていますので、参考にしてください。⾃分で判断が難しければ、かかりつけの先⽣に紹介状を書いてもらうのがよいでしょう。乳がんの診断にはマンモグラフィ、超⾳波検査、MRI検査、細胞診、針⽣検、マンモトーム⽣検などを状態に合わせて⾏いますが、詳細は割愛します。なお、乳腺の場合、がんではない良性のものが途中からがんに変化することは医学的にはありませんので、検査で乳がんでなければ⼿術をすることはほとんどありません。

 

乳がんの特徴

乳がんの治療は

  • ⼿術
  • ⼿術後全⾝薬物療法(⼿術前のこともあります)
  • 放射線治療(必要ない例もあります)

以上がうまく組み合わさって初めて“根治的治療”となります。3つのうちどれが⽋けても不完全な治療になってしまいます。マンモグラフィや超⾳波でしかとらえられない乳がんの場合、多くは真の意味での早期発⾒ですので、⼿術だけで治ってしまう可能性が⾼いと⾔えますが、乳がんは他のがんに⽐べるととてもゆっくり進⾏することが特徴で、しこりを触れるような乳がんは、たとえ⼤きさが1cmほどであっても発⽣から平均約10年が経過しています。つまり、⾒つかったときにはすでに全⾝にがん細胞が循環してしまい、どんな精密検査でも検出することができないようなミクロの転移が肺、肝臓、⾻などの臓器に⽣じていることが、ままあります(このような転移を“微⼩転移”といいます)。乳がんは全⾝病の性格が強いがんですので、たとえ⼩さくても油断は禁物です。⼿術後の病理検査結果で、この“微⼩転移”が⽣じているかもしれない確率を、ある程度推測することが⼤切です。つまり、われわれ医師は“乳がんは全⾝病”であることを⼤前提に治療を組み⽴てますので、⼿術は乳がんを治すための⼿段の⼀つであることを理解してください。⼿術以外の薬物療法や放射線療法が極めて重要なのは、いくらかは⽣じているかもしれない“微⼩転移”を撲滅させるためなのです。微⼩転移を撲滅させなければ、いくらいい⼿術を受けてもいつかは乳がんが全⾝に再発します。わかりにくい乳がん治療のポイントはまさにここにあります。幸い、乳がんは薬や放射線がとても効きやすいがんなので、全⾝の転移が“微⼩転移の状態”であればこれらで消失させることが可能です。残念ながら現在の⽇本では、“微⼩転移”がある程度の確率で存在する状態で乳がんが発⾒される⽅が多数を占めます。しかしながら、薬や放射線を駆使して⼿術前後に頑張っていただくことで、多くの患者さんを乳がんという病気あるいは再発の恐怖から解放してあげることが可能なことも医療の世界では常識ですし、科学の⽬で⾒ても歴然たる事実です。マンモグラフィによる早期発⾒に勝る良薬はないことは私も同感ですが、そればかりがもてはやされることには少々違和感を覚えますし、早期発⾒されなくても科学の⼒で何とかなる⽅が多いのも乳がんの特徴であることを乳がん治療医として強調したいと思います。

乳がんはゆっくりと進⾏する「全⾝病」

微⼩転移の撲滅が重要

マンモグラフィによる早期発⾒に勝る良薬はなし

 

 

 

 

遺伝性乳がんの遺伝カウンセリングについて

 

家族歴の⾒られる乳がん患者さんでは、乳がんの発症に「遺伝要因」が関与していることがあります。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer: HBOC)とは、

  • 若年性(40歳以下)で乳がんを発症する
  • 両側(または⽚側)の乳房に、同じ時に複数の(または時間をあけて別の)乳がんを発症する
  • 男性乳がんを発症することがある
  • 乳がんだけでなく、卵巣がんも発症する
  • 他の臓器(すい臓、前⽴腺など)にがんを発症することがある
  • トリプルネガティブタイプ乳がんを発症する

などの特徴を持ち、遺伝⼦異常として、『BRCA1遺伝⼦』または、『BRCA2遺伝⼦』に⽣まれつき変異(異常)を持つ、遺伝性乳がんの⼀つです。

最近、関⼼も⾼まりつつあり、⼀般的にも知られるようになってきています。

最近できた概念ではないですが、カウンセリング・診断・治療を、きちんとした形で対応できる施設は限られており、みなさんが相談したいと思われても、対応できる窓⼝を置いている施設が福⼭にはありませんでした(2015年8⽉現在)。そこで、当院では、2015年から、乳がん遺伝カウンセリング外来を⽴ち上げ、診療体制を整えています。診療を希望される際には、まず、電話相談をいただき、相談内容を確認した上で、⽉曜⽇の午後の乳がん遺伝カウンセリング外来(⾃費診療で30分5400円)への予約を⼊れさせて頂くことになります。

乳がん遺伝カウンセリングの内容としては、

  • 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群とうい病気の説明
  • 家系内での乳がんや卵巣がんなど詳しい発症状況の確認
  • 遺伝⼦異常がどの程度疑われるかのリスクの評価
  • 遺伝⼦検査※(⾃費診療で20万円程度)のご案内

・診断された時の対応(予防、治療、検診︓基本的に⾃費診療)のご案内などを⾏います。家族歴や上記の特徴があり、ご⾃⾝や、ご家族の乳がんになるリスクが⼼配な⽅は、まずは電話でご相談ください。

※遺伝⼦検査は⾃費診療にはなりますが、当院にて、実施できる体制を整えております。ファルコバイオシスムズHBOC情報サイト︓www.hboc.info/where/chugoku/index.html#hiroshima


診療受付時間
8時30分から11時30分
患者さん及びご家族の皆さまへのお願い
※当院は原則予約制です。初診はかかりつけ医で予約を取り、紹介状をお持ちください。
外来診療日
月曜日から金曜日
祝日・年末年始を除く